休日であるにも関わらず、マシュマロタウンの中央広場には活気がなかった。
それもそのはず。今日は生憎の雨天だ。
あがる気配のない雨と『雨天中止』と書かれた看板を見て、クローブは歩を進める。
このまま素直に家に帰る気にもなれない。


【休日の朝の雨】


「なに、今日はデートしないの?」
遅く起きたライムをからかうように姉が言う。
眠そうに半目でじとりと一睨みをするが、彼女は動じない。
「できるわけないだろ、この雨で」
ライムは雨の日には機嫌が悪い。湿度が高くなるのも関係してか、寝るだけになってしまう。
ようやく起きたのは空腹に堪えかねての事だ。
冷蔵庫を開けると、玄関からブザーの音がした。
「はーーーい。ライム、あんた出てよ」
「姉さんが出ればいいだろ」
「家事もなんもやらないで、よく言うわ」
ぶちぶちと文句を言いながら玄関まで歩く。
「あら」だの「まぁ」だの聞こえる声がしたが、朝食のメニューを考えているライムには聞こえていない。
「ライム、お客さん」
「え? 誰?」
ダイニングまで連れてきた客を見て、ライムは軽く驚いた。
「クローブ。どうしたんだ?」
「聞いてくれよライム!」
この時点で嫌な予感が全身をよぎった。
「ぼくがこの間チケットを手に入れたのは知ってるだろう?」
「ああ。なんだっけ。レゲエだかなんだかの野外ライブ…」
学校で騒ぎに騒ぎたててチケット取りに必死だったのを思い出す。
記憶が正しいならそのライブは確か今日。
雨にならなければ広場で行われているだろうから、そこを避けてのデートコースを考えていた。
「そのライブが…雨天中止だったんだよ〜〜!!!」
未だパジャマ姿のライムの肩を掴んで揺さぶりながらクローブが叫ぶ。
寝起きに耳もとで叫ばれてクラクラしてきた。
それが相当悲しいのは理解した。理解したからどうにかしてほしい。
「ったって、なんでいきなりボクの家に」
「だって広場から一番近いのライムの家だし」
「サンディの家は」
「サンディに言ったって追い返されるのが関の山だろ?」
そこまで理解してて、じゃあなぜライムの家に来るのか。
困った顔をしているライムを見て、クローブは一歩後ろへ下がった。
「…ごめん、ぼく、迷惑だったな」
「あ、いや、別にそういうわけじゃないんだ。座りなよ」
椅子を勧める。クローブは少しためらってそれに座った。
朝食を用意しながら、ライムは少し思う。

まぁ、たまにはこういう休日も、悪くないかな。

「で、今日のライブってどんな奴らが出るはずだったんだ?」

クローブの語りが始まる事を推測しながら。
どこか落ち着いた様子でライムは雨を見つめた。




*モドル*

女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理